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短編にも満たないくらい短いのをつらつら書く場所であります。更新頻度は恐らくちょうまちまち。
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・ティーンズ
・死ネタですご注意……!
・またもや自由曲をモチーフにしてみた
・↑明日コンクールだし!(…
・神田とラビが大変胡散臭いですえへ
・最近真面目にティーンズがすきすぎてこまってる


もう、目の前に何があるのかすらよくわからない。視界が霞んで、認識できるのは空のどんよりした鈍色のみ。全身に負った深い傷の痛みももう感じなくなり、肌を伝う血の感覚さえわからない。本当に自分が怪我をしているのか、血を流しているのかさえ疑問だった。それなのに何故か、寝転がったまま頭の先に伸ばした手が触れているみっつの手の感覚だけはわかる。自分が存在しているのかさえわからないのに、彼らが存在していることはわかるのだ、それはきっと彼らにとっても同じだろう。4人で円を描くように寝転がり、同じように頭の先に腕を伸ばし、全員の手に触れられるように重ねた彼らにとっても。

「さいご、くらい、ぜんぶ……はきだそうよ、ねえ」

リナリーが苦しそうなゼイゼイ声で、それでも柔らかく言った。誰にも表情は見えないが、きっと焦点の合わない目でいつもの優しい笑顔を浮かべているのだろう。

「うん、いいとおもう、……そうだね、さいごだから、ね」

アレンの声はリナリーよりはしっかりしていたが、それでも必死に搾り出しているような声だった。それでもやはり、リナリーと同じように、優しい笑顔を浮かべているのだろう。つい先刻までの表情とは全く異なる、優しい。

「うん、………もっといっしょに生きたかった な、あれんくんと、かんだと、らびと」
「……ああ」

元々低めだった神田の声は、いまや掠れて声にもなっていなかった。ただその唇からこぼれおちた息が空の中に吸い込まれてゆく。それでも、今まで神田が一度も出したことのないような、あまりにも安らかな声。愛に満ちた声だった。

「いまここでしななくても、できないけどな、……いっしょに、老いてゆきたかった、」
「おれ、ブックマンのこうけいしゃだったけど、さ……なかまなんて作っちゃだめなんだけど、やっぱだいすきだった」
「だれ、が?」
「りなりーが、あれんが、ゆうが、きょうだんのみーんなが」

きかなくてもわかるっしょ、という、妙に裏返ったラビの言葉に、リナリーが小さく笑って謝った。

「やっぱ、いっしょに生きたかった、さー」
「いっしょに老いていけたら、もっといい、なー」
「いまさらだけど、ねー」
「だが、」

そろそろ思考がシャットアウトされ始めた。瞼が重くなる、それでも神田は最期に言葉を紡ごうと、アレン、リナリー、ラビは神田の言葉を聴こうと精一杯この世界に自分を押しとどめる。もうアクマも伯爵もいない、この美しい世界に。

「ともに生きるのも、老いるのもよろこびなら、ともに死ぬのも、よろこびだよな、」

その言葉に、思わず3人は掠れた声で笑った。そうだね、と各々に同意して、重ねた手に力を込める、が、もうそんな余力も残ってない。
アレンの隣で少しも動かずじっとしていたティムキャンピーが、ふとリナリーとラビの目の前に飛んできた。ぱたぱたと羽を動かし、ふたりをじっと見つめる。そんなティムキャンピーを見たふたりは笑みをさらに深めて、もうほとんど息の声で言葉を紡いだ。

「にいさん、」
「ジジイ、」
「ごめんなさい、」
「ほんとすまねェさ、」

「「ありがとう、」」

ティムキャンピーはその言葉を聴くと、ふわりとアレンの隣へまた戻った。汚れた白い髪の中に、埋もれる。

「ああ、もうねむい、さ」
「だ、な」
「うん、」
「じゃあ、いっしょに、寝よう、か」
「おー」

そして4人は、重くなっていく瞼を逆らわずにゆっくり下ろしていく。最期にやさしい笑みを残して、
最期をともに生きた彼らに愛の言葉を遺して、
一生をともに死んだ彼らからの愛の言葉を、聞きながら。

あまりにも美しい灰色の空から、ふわりと光が差し込んだ。








最近これを思い浮かべながら歌うことが多いという痛さ
歌いながら浮かべると本当に泣きそうになるので毎回大変です。
コンクール中泣いたらどうしようNE! でもそれ審査員に見られたら絶対金賞だと思うんだ!(?)
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